ZAIBIZ|企業分析

野村総合研究所4307有報もと概算

東証プライム・IT・通信|2025年3月期 通期
売上収益
7,648億円
営業利益
1,349億円
ROE
22.5%
概要詳細
このページの要点
  • 営業利益率17.6%・ROE22.5%は、SIerの中で突出しています
  • 秘密は共同利用型。1つつくって、何社にも使ってもらう形です
  • 売上の48%(3,666億円)は金融ITが占めます

00野村総合研究所は、何をしている会社?

フク

野村総研って名前、シンクタンクっぽいよね。実際は何をつくってる会社なんだろう?

A. SIer(システムインテグレーター)。顧客企業のシステムを、まるごと請け負ってつくる会社です。

まず、この業種のふつう

SIerは、銀行や役所や製造業が使う業務システムを、相談を受けて設計し、つくり、動かし続けるところまで一式で請け負う商売です。自社の製品を店に並べて売るのではなく、発注が来てから、その会社のためにつくります。

値段の付き方は独特で、「何人が何か月かかるか」で決まります。これを人月と呼びます。1人が1か月働く分をいくら、と積み上げて見積るわけですね。だから売上を増やすいちばん確実な方法は、人を増やすことになります。

そしてつくったものは、その1社の業務に合わせて作り込んであります。次の案件でそのまま使い回せません。案件が終われば、また1から人を集めて設計し直すことになります。

この構造のせいで、SIerは規模が大きくなっても利益率が上がりにくいのです。国内大手の営業利益率はおおむね7%前後で並びます。

ふつうのSIerの商売 — 1社から請け負い、その1社のためにつくる

¥お金モノ・サービス情報・契約
FLOWふつうのSIer:受託でつくって、納めて、保守する
顧客企業(1社)自社専用のシステムを発注するふつうのSIer要件定義・設計人月で見積る開発・テストつくるたび人手運用・保守契約ごとに担当1社専用のシステムその会社の業務に作り込む他社には使い回せない協力会社・外注先足りない人手を集める¥¥開発費(人月×単価)=人を出した分だけシステム・保守1社ごとに作り込む開発の担い手外注費売上を伸ばす方法が「人を増やす」しかないだから大手SIerの営業利益率は7%前後で並ぶ

細かいところは、画面をピンチで拡大して見てください

一般的なSIerの商流。業種の型を示す図で、特定企業の数値ではない。

同じ業種の顔ぶれ
  • 富士通売上3.55兆円・営業利益率7.5%
  • NEC売上3.42兆円・営業利益率7.5%
  • NTTデータ売上4.64兆円・営業利益率7.0%
  • 野村総合研究所(この会社)売上7,648億円・営業利益率17.6%

A. 野村総研はSIerです。ただし、SIerのふつうの型からは外れています。01の商流図を、この図と見比べる

1

1社ごとではなく、何社にも同じものを貸します

ふつうのSIerは顧客1社のためにつくります。いっぽう野村総研の金融ITは、証券会社の共通業務を1つの基盤にまとめ、複数社に使ってもらう共同利用型が中心です。つくる費用は1回きりなので、使う会社が増えるほど利益が残ります。

2

売った先が「案件」ではなく「利用料」です

受託は納品して終わり、次はまた1からです。共同利用型なら使われ続けるかぎり利用料が入ります。商流図で言えば、顧客から自社へ向かう¥の矢印が1本ではなく複数本あり、しかも切れません。

3

だから数字が同業と揃いません

営業利益率は17.6%。富士通7.5%、NEC7.5%、NTTデータ7.0%という業種の相場から外れています。同じSIerという括りでも、儲けの仕組みが違うことが、数字に出ているわけですね。

フク

じゃあ、その仕組みで実際にどう儲けてるのか見ていこう。

01野村総研は、何で儲けている会社?

フク

共同利用型って言われても、まだピンとこないな。具体的に何を貸してるの?

A. 証券・銀行の共通システムを、何社にも貸すことで儲けています。1社ごとに作り直さないのが効率の源です

野村総合研究所の商売の仕組み — 誰から誰へ、お金が動くか

¥お金モノ・サービス情報・契約
FLOW野村総合研究所:金融ITと産業IT
証券会社複数社が同じ基盤を使う銀行・保険バックオフィス業務事業会社・官公庁産業IT・コンサル共同利用型の基盤証券バックオフィス等野村総合研究所金融ITソリューション売上 3,666億円産業IT・コンサル2,668億円・603億円研究開発61億円/年協力会社・外注先開発リソースの確保¥¥¥¥¥利用料(使った分だけ)同じ仕組みを共同で使う利用料・開発費同じ仕組みを共同で使うつくって動かし続ける使われるほど入る開発の担い手外注費ふつうのSIerは1社ごとにつくる。ここは1つを何社にも貸すつくる費用は1回。使う会社が増えるほど利益が残る営業利益率17.6%・ROE22.5%は同業の2倍以上

細かいところは、画面をピンチで拡大して見てください

野村総合研究所の商流。金額は第60期 有価証券報告書(25/3期)より。

1

金融ITが売上の48%

金融ITソリューションの売上は3,666億円です。証券会社のバックオフィスなど、同じ仕組みを複数社が使う共同利用型が中心にあります。

2

つくるのは1回、使うのは何社も

受託開発が「1社ごとに作る」のに対して、共同利用型は開発費を何社かで分け合います。だから同じ売上でも、残る利益が大きくなるのです。

3

コンサルも持っています

コンサルティングの売上は603億円と小さいのですが、上流の相談から入って、そのまま仕組みまで請け負う流れをつくる役割を担っています。

フク

じゃあ次は、その売上7,648億円を分解してみるよ。

02売上7,648億円は、何でできている?

フク

金融ITが半分なら、残りの半分は何が占めてるんだろう?

A. 金融ITが半分、産業ITが3分の1です。

売上収益7,648億円25/3期・連結・IFRS
金融ITソリューション3,666億円証券・銀行・保険向け。共同利用型が中心
産業ITソリューション2,668億円流通・製造・サービス業向け
ITプラットフォーム677億円データセンター・基盤サービス
コンサルティング603億円経営・業務の上流

営業利益率は17.6%です。富士通・NEC・NTTデータがそろって7%台であることを考えると、同じ受託でも倍以上の利益を残していることになります。

研究開発費は61億円で、売上の0.8%にとどまります。新しい技術を発明するより、金融の業務知識を持っていることが価値になる商売なのですね。

フク

利益率が同業の倍以上っていう数字、その理由を次で確かめよう。

03なぜ野村総研だけ利益率が高い?

フク

同じ受託の会社なのに、どうしてそこまで差がつくの?

A. 同じものを何社にも売っているからです。

1

利益率17.6%は同業の2倍以上です

富士通7.5%、NEC7.5%、NTTデータ7.0%に対して17.6%。ROEも22.5%で群を抜いています。同じ「SIer」という括りでも中身が違うことが、はっきり数字に出ています。

2

資産が軽いのも効いています

総資産は9,285億円で、売上(7,648億円)の1.2倍にとどまります。NTTデータ(売上の1.7倍)と比べて軽く、軽い資産で高い利益という理想的な形になっています。

フク

強い会社にも弱点はある。次で見ていこう。

04いま、何と戦っている?

同期の実績より

フク

ここまで強いと、逆に心配なところはないのかな?

A. 金融への集中と、人材の確保です。

集中

売上の半分が金融という偏り

金融ITが48%を占めるため、証券・銀行のシステム投資が細れば全社に響きます。産業ITをどこまで伸ばせるかが、分散の鍵になります。

人材

高い単価は、高い人材で成り立つ

利益率17.6%は、業務を深く知る人がいて初めて出る数字です。採用と育成が滞れば、この優位はすぐには保てません。

フク

他のSIerと並べると、違いがもっとはっきりするよ。

05他のSIerと、何が違う?

フク

数字で並べると、どのくらい違うんだろう?

A. 1つつくって何社にも売る形にしたことです。

野村総研富士通NECNTTデータ
売上収益7,648億円3.55兆円3.42兆円4.64兆円
営業利益率17.6%7.5%7.5%7.0%
ROE22.5%12.6%9.1%8.0%
総資産/売上1.2倍0.99倍1.26倍1.68倍
研究開発費61億円1,012億円992億円283億円

各社の25/3期 有価証券報告書より。

フク

最後に、この形が5年でどんな結果を出したのか見てみよう。

065年でどう伸びた?

フク

利益率が高いのは分かった。ちゃんと伸びてもいるの?

A. 売上1.39倍、利益1.77倍。利益のほうが速く伸びています。

売上収益は5,503億円から7,648億円へ1.39倍、親会社帰属利益は529億円から938億円へ1.77倍になりました。規模より先に利益が伸びているのは、共同利用型が効いている証拠です。

ROEも18.2%から22.5%へ上がっています。大きくなりながら効率も上げたという、NTTデータとは正反対の5年でした。

5年の推移
売上収益(億円)親会社帰属利益(億円)ROE(%・下段)5年で 売上1.39倍 / 利益1.77倍5,50352921/3期6,11671422/3期6,92276323/3期7,36679624/3期7,64893825/3期18%18.2%21.3%20.7%19.9%22.5%21/3期22/3期23/3期24/3期25/3期

上段の2本は縦の縮尺が違います(利益は売上の1割前後のため)。値は棒の上の数字で読んでください。濃紺の棒のほうが立ち上がりが急なのが、利益が売上より速く伸びたということです。

5年間ROEが18%を割らず、しかも上昇しています。受託中心の同業では珍しい、安定した高効率です。

フク

おつかれさま。下のまとめで振り返ってね。

--まとめ

野村総研は、証券や銀行の共通システムを何社にも使ってもらう形で、受託でありながら高い利益率を出している会社です。営業利益率17.6%・ROE22.5%は同業の倍以上。売上の半分が金融という偏りと、単価を支える人材の確保が、これからも続く課題になります。

ほかの会社を読むときも、同じ3つの問いが使えます
  • 第二の柱はあるか(本業の隣で稼ぐ仕組み)
  • 1個あたりに割るといくらか(規模の錯覚を外す)
  • 連結の外に誰がいるか(勢力圏は関係会社の欄に出る)

07このページを作成するにあたっての参考資料

財務数値
野村総合研究所の有価証券報告書(2025年3月期 通期)をもとに編集・要約した概算値
決算発表
有価証券報告書 2025年3月期(2025年6月提出)/2025年3月期決算短信(2025/4/24・IFRS)
会社計画
2025年4月24日発表
株価
2026年6月26日時点のスナップショット(自動更新はしていません)

最新の発表はこちら:野村総合研究所 株主・投資家向け情報 ↗

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財務数値
野村総合研究所の有価証券報告書(2025年3月期 通期)をもとに編集・要約した概算値
決算発表
有価証券報告書 2025年3月期(2025年6月提出)/2025年3月期決算短信(2025/4/24・IFRS)
会社計画
2025年4月24日発表
株価
2026年6月26日時点のスナップショット(自動更新はしていません)

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