野村総合研究所4307有報もと概算
- 営業利益率17.6%・ROE22.5%は、SIerの中で突出しています
- 秘密は共同利用型。1つつくって、何社にも使ってもらう形です
- 売上の48%(3,666億円)は金融ITが占めます
00野村総合研究所は、何をしている会社?
フク野村総研って名前、シンクタンクっぽいよね。実際は何をつくってる会社なんだろう?
A. SIer(システムインテグレーター)。顧客企業のシステムを、まるごと請け負ってつくる会社です。
SIerは、銀行や役所や製造業が使う業務システムを、相談を受けて設計し、つくり、動かし続けるところまで一式で請け負う商売です。自社の製品を店に並べて売るのではなく、発注が来てから、その会社のためにつくります。
値段の付き方は独特で、「何人が何か月かかるか」で決まります。これを人月と呼びます。1人が1か月働く分をいくら、と積み上げて見積るわけですね。だから売上を増やすいちばん確実な方法は、人を増やすことになります。
そしてつくったものは、その1社の業務に合わせて作り込んであります。次の案件でそのまま使い回せません。案件が終われば、また1から人を集めて設計し直すことになります。
この構造のせいで、SIerは規模が大きくなっても利益率が上がりにくいのです。国内大手の営業利益率はおおむね7%前後で並びます。
ふつうのSIerの商売 — 1社から請け負い、その1社のためにつくる
細かいところは、画面をピンチで拡大して見てください
一般的なSIerの商流。業種の型を示す図で、特定企業の数値ではない。
- 富士通売上3.55兆円・営業利益率7.5%
- NEC売上3.42兆円・営業利益率7.5%
- NTTデータ売上4.64兆円・営業利益率7.0%
- 野村総合研究所(この会社)売上7,648億円・営業利益率17.6%
A. 野村総研はSIerです。ただし、SIerのふつうの型からは外れています。01の商流図を、この図と見比べる
1社ごとではなく、何社にも同じものを貸します
ふつうのSIerは顧客1社のためにつくります。いっぽう野村総研の金融ITは、証券会社の共通業務を1つの基盤にまとめ、複数社に使ってもらう共同利用型が中心です。つくる費用は1回きりなので、使う会社が増えるほど利益が残ります。
売った先が「案件」ではなく「利用料」です
受託は納品して終わり、次はまた1からです。共同利用型なら使われ続けるかぎり利用料が入ります。商流図で言えば、顧客から自社へ向かう¥の矢印が1本ではなく複数本あり、しかも切れません。
だから数字が同業と揃いません
営業利益率は17.6%。富士通7.5%、NEC7.5%、NTTデータ7.0%という業種の相場から外れています。同じSIerという括りでも、儲けの仕組みが違うことが、数字に出ているわけですね。
フクじゃあ、その仕組みで実際にどう儲けてるのか見ていこう。
01野村総研は、何で儲けている会社?
フク共同利用型って言われても、まだピンとこないな。具体的に何を貸してるの?
A. 証券・銀行の共通システムを、何社にも貸すことで儲けています。1社ごとに作り直さないのが効率の源です
ふつうのSIerの商売 — 1社から請け負い、その1社のためにつくる
細かいところは、画面をピンチで拡大して見てください
一般的なSIerの商流。業種の型を示す図で、特定企業の数値ではない。
野村総合研究所の商売の仕組み — 誰から誰へ、お金が動くか
細かいところは、画面をピンチで拡大して見てください
野村総合研究所の商流。金額は第60期 有価証券報告書(25/3期)より。
野村総合研究所のエコシステム — 仕入れ、つくり、届くまで
仕入先から、部品や素材が入ってくる
金融ITが売上の48%
金融ITソリューションの売上は3,666億円です。証券会社のバックオフィスなど、同じ仕組みを複数社が使う共同利用型が中心にあります。
つくるのは1回、使うのは何社も
受託開発が「1社ごとに作る」のに対して、共同利用型は開発費を何社かで分け合います。だから同じ売上でも、残る利益が大きくなるのです。
コンサルも持っています
コンサルティングの売上は603億円と小さいのですが、上流の相談から入って、そのまま仕組みまで請け負う流れをつくる役割を担っています。
フクじゃあ次は、その売上7,648億円を分解してみるよ。
02売上7,648億円は、何でできている?
フク金融ITが半分なら、残りの半分は何が占めてるんだろう?
A. 金融ITが半分、産業ITが3分の1です。
営業利益率は17.6%です。富士通・NEC・NTTデータがそろって7%台であることを考えると、同じ受託でも倍以上の利益を残していることになります。
研究開発費は61億円で、売上の0.8%にとどまります。新しい技術を発明するより、金融の業務知識を持っていることが価値になる商売なのですね。
フク利益率が同業の倍以上っていう数字、その理由を次で確かめよう。
03なぜ野村総研だけ利益率が高い?
フク同じ受託の会社なのに、どうしてそこまで差がつくの?
A. 同じものを何社にも売っているからです。
利益率17.6%は同業の2倍以上です
富士通7.5%、NEC7.5%、NTTデータ7.0%に対して17.6%。ROEも22.5%で群を抜いています。同じ「SIer」という括りでも中身が違うことが、はっきり数字に出ています。
資産が軽いのも効いています
総資産は9,285億円で、売上(7,648億円)の1.2倍にとどまります。NTTデータ(売上の1.7倍)と比べて軽く、軽い資産で高い利益という理想的な形になっています。
フク強い会社にも弱点はある。次で見ていこう。
04いま、何と戦っている?
同期の実績より
フクここまで強いと、逆に心配なところはないのかな?
A. 金融への集中と、人材の確保です。
売上の半分が金融という偏り
金融ITが48%を占めるため、証券・銀行のシステム投資が細れば全社に響きます。産業ITをどこまで伸ばせるかが、分散の鍵になります。
高い単価は、高い人材で成り立つ
利益率17.6%は、業務を深く知る人がいて初めて出る数字です。採用と育成が滞れば、この優位はすぐには保てません。
フク他のSIerと並べると、違いがもっとはっきりするよ。
05他のSIerと、何が違う?
フク数字で並べると、どのくらい違うんだろう?
A. 1つつくって何社にも売る形にしたことです。
| 野村総研 | 富士通 | NEC | NTTデータ | |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 7,648億円 | 3.55兆円 | 3.42兆円 | 4.64兆円 |
| 営業利益率 | 17.6% | 7.5% | 7.5% | 7.0% |
| ROE | 22.5% | 12.6% | 9.1% | 8.0% |
| 総資産/売上 | 1.2倍 | 0.99倍 | 1.26倍 | 1.68倍 |
| 研究開発費 | 61億円 | 1,012億円 | 992億円 | 283億円 |
各社の25/3期 有価証券報告書より。
フク最後に、この形が5年でどんな結果を出したのか見てみよう。
065年でどう伸びた?
フク利益率が高いのは分かった。ちゃんと伸びてもいるの?
A. 売上1.39倍、利益1.77倍。利益のほうが速く伸びています。
売上収益は5,503億円から7,648億円へ1.39倍、親会社帰属利益は529億円から938億円へ1.77倍になりました。規模より先に利益が伸びているのは、共同利用型が効いている証拠です。
ROEも18.2%から22.5%へ上がっています。大きくなりながら効率も上げたという、NTTデータとは正反対の5年でした。
上段の2本は縦の縮尺が違います(利益は売上の1割前後のため)。値は棒の上の数字で読んでください。濃紺の棒のほうが立ち上がりが急なのが、利益が売上より速く伸びたということです。
| 指標 | 21/3期 | 22/3期 | 23/3期 | 24/3期 | 25/3期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 5,503億円 | 6,116億円 | 6,922億円 | 7,366億円 | 7,648億円 |
| 親会社帰属利益 | 529億円 | 714億円 | 763億円 | 796億円 | 938億円 |
| ROE | 18.2% | 21.3% | 20.7% | 19.9% | 22.5% |
| 総資産 | 6,565億円 | 7,897億円 | 8,382億円 | 9,228億円 | 9,285億円 |
5年間ROEが18%を割らず、しかも上昇しています。受託中心の同業では珍しい、安定した高効率です。
フクおつかれさま。下のまとめで振り返ってね。
--まとめ
野村総研は、証券や銀行の共通システムを何社にも使ってもらう形で、受託でありながら高い利益率を出している会社です。営業利益率17.6%・ROE22.5%は同業の倍以上。売上の半分が金融という偏りと、単価を支える人材の確保が、これからも続く課題になります。
- 第二の柱はあるか(本業の隣で稼ぐ仕組み)
- 1個あたりに割るといくらか(規模の錯覚を外す)
- 連結の外に誰がいるか(勢力圏は関係会社の欄に出る)
07このページを作成するにあたっての参考資料
- 財務数値
- 野村総合研究所の有価証券報告書(2025年3月期 通期)をもとに編集・要約した概算値
- 決算発表
- 有価証券報告書 2025年3月期(2025年6月提出)/2025年3月期決算短信(2025/4/24・IFRS)
- 会社計画
- 2025年4月24日発表
- 株価
- 2026年6月26日時点のスナップショット(自動更新はしていません)
最新の発表はこちら:野村総合研究所 株主・投資家向け情報 ↗
一次情報の記載と完全には一致しない場合があります。正確な数値はEDINET(金融庁の開示システム)や 各社の適時開示でご確認ください。本ページは情報提供のみを目的とし、売買の推奨ではありません。
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